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イノベーション組織研究12: Veolia U-Start

民間水道事業者「Veolia」と公的スタートアップ支援機関「EIT」のタッグ

今回は、ヨーロッパにおいて官民協働で運営されているアクセラレーションプログラム「U-Start」について紹介します。これまで紹介してきたイノベーション組織と異なり、U-Startは単なるプログラムですが、民間企業と行政機関が連携した取り組みである点が特徴です。

U-Startは、水・廃棄物・エネルギー管理事業を展開するフランス企業Veoliaと、EUのスタートアップ支援機関European Institute of Innovation & Technology(以下EIT)が協働するアクセラレーションプログラムです。Veoliaの本社はフランスですが、本プログラムは同社のドイツ法人とEITが共同運営しており、循環経済、気候変動への対応といった分野での事業創出を目的としています。

ここで、EITについて少し解説します。 EITは欧州のイノベーション創出能力の底上げを目標に、2008年EUの機関として設立された組織です。EITは担当領域ごとに分けられた複数の組織(EIT InnoEnergy, EIT RawMaterials, EIT Health, EIT Food, etc)から構成され、アイデアから製品化までさまざまなフェーズの起業家支援を実施しています。これまで既に160程度のスタートアップ企業への支援実績があり、サステナビリティ領域では欧州最大級のアクセラレーターといえます。

U-Startの特徴

U-Startは、プログラムの上限期間が長いこと、レイターステージ寄りのスタートアップを対象としていることが特徴です。

通常3ヶ月程度となっている多くのアクセラレーターと異なり、U-Startではプログラム期間が最大2年間に設定されています。また、参加資格についても、既にプロトタイプが完成されている、もしくはプロダクト/サービスが立ち上がっているチームであることが条件となっています。 これにより、採択されたチームはVeoliaのアセットを活かしたコンセプトやビジネスモデルの検証にいち早く取り組みつつ、ブラッシュアップに長い時間をかけることが可能になります。 このような期間・条件が設定されている背景には、Veoliaの主要な事業ドメインであるインフラ分野において、通常プロトタイプの改善・ビジネスモデルのブラッシュアップに長い時間を要するということがあるようです。

また、U-Startでは、サービス/プロダクトコンセプトの検証、実証実験、プロトタイプ改善、製品化といった開発面のサポートだけでなく、外部機関と協力した法務面のサポートや、テスト用地の提供、販路の提供、コワーキングスペースの無料使用権付与など、包括的にスタートアップを支援しています。

これまでに採択されたスタートアップ

U-Startではこれまで、エネルギー効率向上、代替エネルギーの推進、低炭素経済促進といったインフラ領域のテーマでプログラムが開催されました。ここからは採択されたスタートアップについて紹介します。

binee

ライプツィヒを拠点として、「浪費を資源に変える」ことを目指すスタートアップ。 デバイスをリサイクルに出すと商品券がもらえるリサイクルシステムを開発しており、U-Startの支援を受けながらパイロットテストを実施した。事業戦略・法務面の支援をEITから、実務面でのメンタリング・製品実証の支援をVeoliaから受けた]

Extracthive

フランス発のスタートアップ。繊維強化プラスティックの高品質リサイクル技術を開発・提供する企業。EIT RawMaterialsと協賛企業の現状課題にリサイクル工程技術の革新があり、当課題への貢献を目的として採択された

Pendula

廃棄物のオンライン管理システムを提供するスタートアップ。毎日のゴミ処理状況の追跡、サステイナビリティ基準の計測を行い、業務時間とコストを節約するソリューションを開発。U-Start期間中には、同社の開発したアプリをVeoliaの顧客に使用してもらうという実証実験のサポートを受けた

イノベーション組織マッピング

本プログラムは、レイターステージ中心ではあるものの広くスタートアップを公募し、Veolia、EITという官民一体の体制でプログラムが運営されているため、比較的オープンなプログラムといえます。

また、プログラムテーマは、Veoliaの既存事業である資源管理事業と近いテーマ設定が多く、既存事業と近いドメインであると言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はVeoliaのアクセラレータプログラム「U-Start」について紹介しました。

U-Startは民間インフラ企業が行政機関と連携し、スタートアップ支援に取り組むという座組みが大きな特徴です。互いに足りない部分を補完し、官民一体で新規事業創出を目指すという形は参考になるのではないでしょうか。

     
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