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領域トレンドリサーチ 教育領域

様々な業界/領域におけるテクノロジー導入トレンドを紹介する本連載、3つ目に取りあげるテーマは、近年EdTechとして注目が集まる、「教育」領域についてご紹介します。

世界のEdTechへの投資

EdTechとはEducation(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。
デジタル技術を用いた生徒の学び支援や、教師の授業・校務支援を行うサービスを指し、K-12*からリカレント教育まで幅広くサービスが存在します。

教育格差等の社会課題解決の有効な手段として、EdTechへの期待は世界中で高まっています。教育に関する調査機関Holon IQによると2019年の世界のEdTech市場への投資額は70億ドルにのぼります。2020年は上期だけで45億ドルもの投資が行われており、引き続き多額の投資が見込まれる領域です。

*K-12:幼稚園から高校卒業までの13年間の教育期間

中国・アメリカの状況

2010年以降、世界におけるEdTech企業に対する投資総額の国別内訳を見ると、中国52%、アメリカ31%と投資額の大半を中国とアメリカが占めている状況です。またEdTech領域のユニコーン企業は2020年9月次点で世界に20社存在しますが、9社が中国企業、8社がアメリカ企業であり、中国とアメリカがEdTechの主要2カ国と言えるでしょう。

この背景として、中国は、政府が積極的に教育改革に力をいれていることが挙げられます。教育分野でのICT関連予算は約4兆円にものぼります。また、約14億人もの巨大な人口に加え、子どもがいる家庭の家計収入の20%が教育費として費やされる程の高い教育熱が巨大マーケットを形成しています。分野としては、学歴重視の社会を背景に、大学受験熱が非常に高いため、K-12向け教育サービスへの投資が活発です。政策と成長性のある巨大マーケットが多額の投資を後押ししています。

一方、アメリカでは、オバマ政権時に教育省が中心となり、National Education Technology Planを全体指針として掲げ、EdTechを積極的に推進してきました。近年、アメリカのEdTech市場で注目を浴びているのはリカレント教育分野のサービスです。調査機関Equal Oceanによると2019年のEdTech投資のうち39%がリカレント教育へ投資されています。企業の従業員向けのトレーニングサービスへのニーズの高まりが背景となっています。

国内のEdTech市場

日本国内を見てみると、EdTechへの取り組みは、各国に遅れをとっている状況です。しかし、教育現場の課題解決を担うEdTech企業への期待は各国同様に高まってきています。 野村総合研究所によると、国内のEdTech市場は2025年に3,210億円まで伸長すると予想されています。

市場規模の拡大の背景には下記のような理由があります。

STEAM教育の推進

STEAMとはScience(科学)、Technology(工学)、Engineering(技術)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字をとった造語です。科学技術分野の振興を通し、国家の競争力を強化する狙いで各国が力を注いでいる分野です。日本では2020年よりプログラミング教育が必修化されるなど、注目度が高まっています。そして、この分野のコンテンツ学習に相性の良いEdTech企業による教育プログラム提供が期待されています。

リカレント教育の推進

リカレント教育とは、社会に出た後、生涯に渡り就労と修学を繰り返し行う教育システムです。技術革新により急速に変化する社会環境と、「人生100年時代」と呼ばれる若者から高齢者まで活躍が期待される社会の到来は、人生のモデルのマルチステージ化をもたらしました。時代の変化と共に求められるスキルや知識を身につける必要が出たことにより、リカレント教育は注目されるようになりました。老若男女の多様なライフスタイルを持つ人々が学習にアクセスしやすい環境整備をEdTech企業が推進できると期待されています。

ICT環境の整備

文部科学省は1人1台のPC端末と、高速大容量の通信ネットワークを学校に整備し、教育ICT環境を実現する「GIGAスクール構想」を推進しています。多様な子どもたちに個別最適化された学び、そして創造性を育む学びの提供する担い手としてEdTechのソリューションは期待されています。また同時に、教師の負担を低減させるソリューションとしても期待されています。

教師の負担増

教師の校務負担が増加し、長時間労働が問題になっています。文部科学省が2016年に実施した教員勤務実態調査によると、教師1日当たりの勤務時間は当時から10年前と比較し、平日と休日共に増加しています。文部科学省は「学校における働き方改革」を推進する手段として、統合型校務支援システムをはじめとするEdTech企業のソリューションに注目しています。

新型コロナへの対応

新型コロナウイルスの影響により、学校の一斉休校が行われました。家庭での学習手段としてオンライン教育への期待が高まっています。また、リカレント教育の分野では、テレワークで生まれた時間を活用し、スキルを身につけようという動きが高まっています。オンライン教育を提供するEdTech企業への新規会員数は複数の企業で高い伸びを記録しています。

教育領域の全体像

このように大きなポテンシャルがある教育領域ですが、具体的にはどのような分野で新しいプロダクト・サービスが生まれているのでしょうか?

教育領域ではK-12教育からリカレント教育まで幅広い世代を対象に多様なサービスが開発されています。

今回は、学習を行う生徒・受講者向けのサービス、教育を行う教育機関・企業向けのサービスに分類してご紹介します。

生徒・受講生向け

学習コンテンツ:特定の内容を学習できるオンライン教材、映像授業等

学習効率化:効率的な学びを支援する学習管理システム、学習者用SNS

教育機関・企業向け

授業・研修支援:授業運営を支援する学習管理システム、教材・授業制作支援サービス等

その他教員校務支援:授業外業務の負荷を低減する生徒保護者連絡ツール、教師間SNS 経営管理支援:教育機関の経営を支援する生徒募集/教員採用/学校用勤怠サービス

今回の注目領域

今回の連載では、教育領域の中でも以下の4領域に着目し、該当領域のトレンドやスタートアップ/大企業の取り組み事例を紹介、考察します。

1.語学学習サービス

2.プログラミング学習サービス

3.学習効率化サービス

4.教師の負荷低減サービス

次回は、” 1.語学学習サービス”に関するトレンドについてご紹介します。

     
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