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領域トレンドリサーチ 教育領域:プログラミング学習サービス

教育領域の第3回は、昨今の社会情勢も踏まえ、よりニーズが高まっているプログラミング学習サービスについてご紹介します。

日本におけるIT人材の不足

近年、多くの産業においてソフトウェア、データの活用が推進されており、デジタルトランスフォーメーション(DX)もバズワードとなっています。一方で多くの企業において、ソフトウェアに精通したIT人材は十分に確保出来ておらず、これまではSIerなどの外部企業に頼ってきた実情があります。

経産省の「IT人材の需給に関する調査」によると、日本におけるIT人材の不足は今後も深刻化が進むと予測され、2030年の需給ギャップは79万人にまで拡大するというシナリオもあります。2018年時点でのIT人材が約100万人程度である事を踏まえると、かなり大きな需給ギャップであると言えるでしょう。

このIT人材不足は、ITサービスを専業とするIT関連企業だけで無く、ビジネスにITを活用するあらゆる企業にとって、深刻な課題です。

子ども向けプログラミング教育

このような状況を受け、将来のIT人材を育成するため学校教育においてもプログラミング教育の必修化が進んでいます。

2020年からは小学校でもプログラミングが必修化され、子ども向けプログラミング市場は引き続き成長が見込める市場として注目を集めています。

GMOが運営するプログラミング教室検索サービス「コエテコ」によると、2020年の子ども向けプログラミング教育市場規模は伸長し、2019年比123%の139億9,600万円となる見込みです。この傾向は今後も続き、5年後の2025年には2020年の2倍超の292億2,600万円にまで拡大すると予測されています。

子ども向けプログラミング教育サービスの特徴として、教育業界、IT業界、スタートアップだけでなく、鉄道や家電量販店など多様なプレイヤーが参入していることが挙げられます。

従来のプログラミングスクールは、一部の企業が期間限定で行う「短期・イベント型」が主流で、「教室型」はそれほど多くありませんでした。

その後、小学校でのプログラミング教育の必修化を受け、学習塾などの教育業界からの参入が相次ぎ、フランチャイズ展開が進んだ結果、教室の数が急激に増加しました。近年は、鉄道や家電量販店など、教育業界以外からもプログラミングスクール事業への参入も進んでおり、プログラミング教育へのニーズの高まりを示しています。 その他にも、プログラミング教材や、習熟度を測る検定サービスなど様々な事業者が子ども向けプログラミング教育を対象にサービスを提供しています。

大人向けプログラミング学習サービスの広がり

子ども向け教育と同様に、リカレント教育としての大人向けプログラミング学習サービスも拡大しています。

あらゆる産業にソフトウェアが関係するこれからの社会において、ビジネス教養としてプログラミングを学びたい人や、未経験から新たにエンジニアになることを目指して本格的に学習する人まで目的は様々ですが、より多くの社会人がプログラミング学習サービスを利用しています。

今回は、大きく①自習型②オンライン教室型③オフライン教室型の3種類に分類しています。

  1. 自習型:動画や教材を使って、ユーザーが自習するタイプのプログラミング教育サービス。プログラミングに特化せず様々なカリキュラムが学べる(MOOCもこのカテゴリに含む)。
  2. オンライン教室型:オンライン授業や、トレーナーへのQ&Aを通じて学習するタイプのプログラミング教育サービス。物理的な教室は持たず、オンラインで完結する。COVID-19の影響を受け、従来は教室を持っていた企業がオンライン完結型に変化するケースも増えている。
  3. オフライン型:物理的な教室を持ち、その場で授業やトレーナーへのQ&Aができるタイプのプログラミング教育サービス

下図に記載されている以外にも様々なプレイヤーが存在し、今後もより多くの企業がこの領域へ参入することが予想されます。また、AIへの注目の高まりから、AIコースに特化したプログラミングスクールも出てきています。


注目の大人向けプログラミング学習サービス

ここからはプログラミング学習領域の注目サービスを紹介します。

1. 自習型コンテンツで海外展開も進める「Progate」

Progateは、日本発、世界10カ国以上で168万人に使われているプログラミング学習サービスです。

文章よりも直感的で、動画よりも学びやすい、イラスト中心の「スライド学習」を採用し、自分のペースで学習できること、復習しやすいことが強みと言えます。

また、ブラウザ上でコードを書いてすぐに結果を確認することができ、面倒な環境準備が不要なことも特徴です。カリキュラムを通じて学習を進めることで、最終的には自分自身でエラーを解決し、目標に向かって自ら走りきる能力を身につけることができます。

費用面、準備作業共に、手軽にプログラミング学習を始める際に適したサービスと言えるでしょう。

海外展開も積極的に進めており、インドやインドネシアにも法人を設立してサービスを展開しています。インドではすでに15万人のユーザー獲得に成功しており、インドネシアではインドネシア語にローカライズしたサービスを提供することでユーザーからの人気を集めています。インドネシアでは公用語がインドネシア語のため、英語圏の動画学習サービスはユーザーに食い込めていないなか、Progateはローカライズを進めることで差別化に成功したと言われています。

2. プログラミング入門から転職まで支援する「TECH::CAMP」

TECH::CAMPは、関東、名古屋、大阪にオフライン教室を持つプログラミングスクールです。また、オンラインでの受講も同様に対応可能です。

カリキュラムはプログラミングだけでなく、AIコースやデザインコース、ロジカルシンキング、問題解決力、コミュニケーション力といったビジネスパーソンに必要なスキルも学べる点が特徴です。エンジニアを目指すわけではないが、ビジネススキル・教養としてプログラミングを学びたい人に適したサービスと言えるでしょう。

また、エンジニアを目指したい人に向けてはTECH::EXPERTというコースも準備されており、集中的なプログラミング教育と卒業後の就業支援を受けることが可能です。 その他、企業向け研修事業や、企業へのエンジニア人材紹介のサービスも展開しており、既に800社以上が導入しています。

3. 授業料無料でエンジニアを目指せる「42Tokyo」

42 Tokyoはフランスのエンジニア養成機関「42」の東京校として設立されたプログラミングスクールです。「42」自体は、パリにてスタート、現在世界16カ国で開講されています。

42 Tokyoは「誰もが平等に挑戦ができる」というスローガンのもと、年齢、学歴、性別などに関わらず参加可能です。また、学費が無料、24時間365日利用可能、という形式で学習機会が提供される点が特徴です。

応募者は参加前に1カ月間に及ぶ実技テストを通じて選抜されます。テスト期間中、実践プログラム同様にピアツーピア方式で、数百人の応募者が一斉に課題に向かいます。

授業形態は、従来の学校教育のように教師が一方的に講義を行うという形ではなく、学生同士が主体的に学びあう「ピアラーニング」方式を採用しています。

DMMがスポンサーとなって日本展開を進めていますが、その他にも協賛企業として、様々な業界から日本を代表する企業らが名を連ねています。これらのスポンサー企業、卒業生の寄付によって成り立つ42Tokyoですが、卒業後の進路は特に制約されておらず、あくまで日本のエンジニアエコシステムの活性化を目的としています。

また、DMMは42Tokyoの他にもDMM WebCampというプログラミング教育サービスを提供しています。基礎プログラミングだけでなく、受講生同士でチーム開発をしたり、自分だけのオリジナルサービスを開発するなど、より現場に近い実践的な学習ができるのが特徴です。修了後は、専門のキャリアアドバイザーによる転職や就職支援もあり、転職成功率は98%といいます。また、法人向けの人材紹介ビジネスも展開しています。

ここまでに示したように、プログラミング教育サービスと言っても、さまざまな学習方法があり、修了後の人材紹介や就職支援サービスまで展開しているプレイヤーも多くみられます。また、昨今のIT人材不足も相まって、高い転職成功実績を残すサービスも現れています。

その一方で、プログラミングスクールを修了しているだけでは、現場で即活躍できるエンジニアにはなれないという問題も発生しています。これは、教育機関で学びうることと、現場で求められるスキルとのギャップにより生まれる問題と考えられ、プログラミング教育に限らず発生することいえるでしょう。

このギャップを埋めるには、就業後も継続的な学習を行うことが重要と言えます。特にエンジニアは日々急速に技術が進歩する中で、アップデートを続けることが求められます。 そこで、エンジニアの継続学習において有効なサービスを紹介します。

4. 就職後もテクノロジーをアップデートし続けるためのサービス「Plural Sight」

Plural Sightは、ITのプロたちの継続教育を行うサイトです。 Plural Sightのコースは、1,500人にもおよぶ「その道のエキスパート」の外部講師によって作られており、日々新しいコースが追加されていきます。

これらのコースは、受講者のスキル・レベルに応じて作られており、受講者が獲得済みのスキルと、まだ習得できてないスキルのギャップを埋められるようにコースが設計されています。このようなコース設計により、受講者は必要な要素だけを補って学習することが可能になっています。

このコースを修了した者には修了証が発行され、さらに「IQ」と呼ばれる相対比較スコアが付けられます。これによって、多岐にわたるエンジニアのスキルを客観的かつ定量的な尺度で計測することが可能となっており、経営陣としても自社に必要なエンジニアのスキルセットが効率的に判断できるようになります。

また、Plural Sightは単なる学習サイトとしてだけでは無く、コードを書くことに行き詰まったエンジニアが、問題解決方法を求める際に参照するサイトとしても使われています。このような用途でエンジニアが個人的にPlural Sightを使い慣れ親しんでいくうちに、全社的にサービス導入するケースも多く、結果として、すでにPlural Sightは、フォーチュン500の大企業のうち300社以上に使われています。

まとめ・考察


日本におけるIT人材不足は今後、さらに深刻化することが予想されます。

あらゆる産業にソフトウェア、データが強く関わってくることを踏まえると、エンジニアに限らず多くのビジネスパーソンがプログラミングの素養を身につけることが求められるのではないでしょうか。そのようなときに、オンライン完結で、手軽に学習が始められる自習型やオンライン教室型のプログラミング教育サービスは、今後さらに拡大するでしょう。

また、COVID-19の影響を受け、多くの企業がリモートワークを推進したことで、働き方の自由度が高まり、新たに自己研鑽や副業を始めようとする人も増えています。このような社会背景もオンライン型のプログラミング学習サービスの追い風となっています。


一方で、本質的なIT人材不足の問題を解決するには、入門レベルの学習だけでは無く、就職してからも継続的な学習をすることが重要です。Plural Sightのように、就職後の継続学習にも活用でき、かつスキルレベルの尺度になるようなサービスまで拡大できると、より価値の高いサービスになるのではないでしょうか。

今後、国内においてもプログラミング教育サービスと人材系企業が協業しこのようなサービスを展開することも予測されます。

いずれにせよ、あらゆる産業にソフトウェアが求められ、IT人材が継続的に不足する将来を踏まえると、プログラミング教育領域も今後ますます成長していくと予想されます。


いかがでしたでしょうか、今回はプログラミング教育サービスを紹介しました。次回は、学習効率化サービスについて紹介します。

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