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イノベーション組織研究20:サムスン C-lab

サムスンのインハウスインキュベーター「C-lab」

今回は、サムスンのイノベーション組織「C-lab」を紹介します。 C-labは2012年に社内新規事業のインキュベーターとして韓国に設立されました。社員から集めたアイディアを育て、事業化するためのプログラムを運営しており、現在はサムスン本社がある韓国のほか、インド、北京、ウクライナにも拠点を構えています。

世界有数のエレクトロニクス企業となったサムスンは、ピラミッド組織、トップダウンといった印象が強いですが、C-labはイノベーションを起こすための小さな組織づくりを掲げ、「チャレンジ精神」「高速な実装」「失敗を賞賛し、そこから学ぶ文化」を重要視しています。

C-labのプログラムからは、既に多くの事業が生まれています。これまでの全プロジェクトのうち20%程度がサムスンからスピンアウトし、独立した企業として事業を推進しています。また、プログラムには累計900人以上が参加し、多くの社員がスタートアップマインドやクリエイティブな思考法を身につけています。事業創造だけでなく人材育成面でも価値のある取組みであると言えるのではないでしょうか。

また、近年はスタートアップがC-labのプログラムに参加することも認められており、2018年から5年間で500社のスタートアップを支援することを計画しています。

プロダクト創出プロセス

C-labの新規事業創出プロセスは、Idea Discovery、Concept Development、Prototyping、Concept Validation、Exitの5段階で定義されています。

Idea Discovery

社内でのアイディアコンテストやデモデイを通じて、有望なアイディアを探索するフェーズです。サムスンの全社員が年間を通じて応募することが可能で、応募されたアイディアは年2回の採択プロセスを通じて選抜されます。

Concept Development

採択されたアイディアの起案者はクリエイティブリーダーと呼ばれ、一定期間内にコンセプト検証を進めるため、C-labに所属してチームを組成します。チームメンバーはサムスン内の人材に限定されず、クリエイティブリーダーの判断で外部人材を採用することも可能です。 組成されたチームは、Pit-in Campと呼ばれる短期集中プログラムやメンタリングを通じて、事業コンセプトをブラッシュアップします。

Prototyping & Concept Validation

各チームはプロトタイプを開発し、顧客の反応を見ながらブラッシュアップを進めます。 C-labフェアと呼ばれる自社開催の展示会や、CES*、MWC*などの外部展示会へ出展し、市場の反応を見ながら、事業コンセプトをプロダクトに落とし込んでいきます。 また、プロジェクトの成功にフォーカスするため、C-labに所属する期間は、サムスン社内の既存人事評価基準からは完全に外れる点も特徴です。

*CES :全米家電協会(CEA)が主催しアメリカのラスベガスで毎年1月に行われる世界最大規模の家電・ITデバイスの見本市

*MWC (Mobile World Congress):世界最大級の携帯電話関連展示会と世界中の携帯電話会社、端末製造メーカー、テクノロジープロバイダー、販売会社、コンテンツ会社の有名最高経営責任者が出席するカンファレンスを複合したイベント

Exit

Concept Validationフェーズを通過した事業コンセプトはExitフェーズに進みます。2017年時点で、累計228のプロジェクトが実施されましたが、 45%がサムスンの既存事業部門に移管、20%はスピンアウトして独立企業として運営されており、高い成功率を示しています。

また、スピンアウトする際はサムスンからも出資が行われますが、持分20%程度のマイノリティ出資のケースが多く、スピンアウト企業による独立した運営が担保されています。サムスンによるビジネスコンサルティング、マーケティング、PRの支援が受けられる点は、スピンアウトする企業側のメリットと言えるでしょう。

対象とする領域

C-labが対象としているテーマ領域は、図に見られるとおり多岐にわたりますが、現在の注力領域としては、AI、データインテリジェンス、教育、フィンテック、ヘルスケア、IoT、トランスポーテーション、VR/ARが設定されています。

創出されたサービス/プロダクト

ここからは、C-labでコンセプト検証した結果、既にExitを果たし、別会社として運営されている事例をいくつか紹介します。

SALTED

圧力センサーを内蔵し、バランス、体重移動を検知するシューズ。 ゴルフ練習時の体重移動を可視化するアプリケーションを提供している。

Nemonic

メモや画像を簡単に付箋に印刷できる卓上プリンター。 BluetoothでスマートフォンやPCと接続し、印刷データを共有できる。2017年CES Innovation Awardを受賞。

FITT360

肩掛け型の360°カメラ。 4K画質での動画撮影が可能で、運動中の撮影にも適している。 「FITT360 Security」として、警察、セキュリティ企業向け製品も提供。

イノベーション組織マッピング

C-labは当初社員向けのプログラムでしたが、チームに外部人材を採用することも可能となっています。また、最近ではスタートアップの参加も認められており、比較的オープンな取組みになってきていると言えます。 対象領域に関しては、サムスンの既存事業とは異なる領域も注力テーマとなっており、積極的にスピンアウトしていることも含め、既存事業とのシナジー追求はあまり強くないと考えられます。    

まとめ

いかがでしたか、今回はサムスンのイノベーション組織C-labを紹介しました。 採択者に外部人材の採用権が与えられている点や、プログラム期間中は既存の人事評価制度から外れる点、スピンアウトや事業部への移管などExit方法まで実現可能な形が検討されている点など、社内新規事業で陥りがちな課題を回避するよう設計されており、参考になるのではないでしょうか。

参考

C-lab

SALTED

Nemonic

FITT360

     
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