イノベーション組織研究10: Prehype | アーキタイプ株式会社

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イノベーション組織研究10: Prehype

2019/01/23

Startup as a serviceを提供する「Prehype」

今回は、新規事業創出サービスを提供する企業「Prehype」について紹介します。Prehypeは、2010年にデンマーク出身の元起業家であるHenrik Werdelin氏によってマンハッタンで設立されました。

現在はロンドン、コペンハーゲンにもオフィスを持ち、各地で新規事業創出サービスを提供しています。

Prehypeでは、大企業内人材を活用し、リーンスタートアップアプローチを用いることで、大企業内にスタートアップを設立することをビジネスとしています。 最近は国内でもソフトウェアをサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)企業が注目されており、その他にもPaaS、IaaSなど、XaaSという表現が増えています。この表現を借りるとPrehypeはStartup as a Service企業と言えるでしょう。

過去の顧客には、コカコーラ、ベライゾン、LEGO、GE、ユニリーバ、モンデリーズなどがおり、創出した新規事業のExit先としてもAmazon、Microsoft、Facebookなど業界をリードする企業が並んでいます。

ビジネスモデルとしては、工数ベースで費用が発生する受託型ビジネスではなく、事業創出プロセス全体での課金を行っています。 また、Prehype自体も創出する事業に投資することで、より早期の事業拡大に向けてコミットしています。

もちろん、すべてのプロジェクトで大成功する新規事業が生まれるわけではありませんが、上記のビジネスモデルにより、成功率を高めることはできるように思われます。

また、創出される新事業の価値以外に、Prehypeの事業創出プロセスを活用することで産み出される効果として、以下が挙げられています。

・起業家精神のある人材のリテンション プロセスを通じた学びの蓄積 例:Google Waveプロジェクトではプロダクトローンチはされなかったが、プロセス内での学びは、GmailやGoogle Docsの開発に大きく貢献 ・本気で事業創出を目指してマーケットに接することによる、より効率的なマーケット理解

事業創出のプロセス

Prehype の事業創出プロセスは下記の3段階に分かれています。

機会定義
まず、1週間の集中ワークショップを行います。 8〜16人のクライアント選抜メンバーとディスカッションを行い、2〜4の事業アイディアを創出します。 選抜メンバーは、自身の業務、業界の周辺領域にある課題についてブレインストーミングを行い、業界知見に基づく課題を定義します。 この時、Prehypeのメンバーも単なるファシリテーターではなく、投資家として意見します。

続いて、初期のアイディア評価では、各メンバーが最も熱意を持って取り組みたいアイディアを選ぶという、非常にシンプルな方法で行われます。この方法により、できない理由の検討に時間を使わずに、熱意あるテーマが選定されます。

その後、スライド20枚程度の、簡単なLean Product Planを作成し、アイディアを評価します。 Lean Product Plan作成には、デザイナーも活用しビジュアルイメージを作成することで、より感情に訴えかけるピッチを行います。詳細な事業計画ではなく、コンセプトの確からしさと、最低限のユニットエコノミクスに焦点を当てて評価を行います。

100-dayインキュベーション
機会定義フェーズを通過した事業案は、100日間でMVP(Minimal Viable Product)の構築を行うフェーズに移行します。

MVPの開発に当たっては、Prehypeのネットワークを通じて必要なデザイナー、エンジニア、事業開発などのメンバーがアサインされます。 また、100-dayインキュベーションを通過する段階で、クライアント、Prehypeの双方が投資の意思決定を行います。

Prehypeもエクイティを持つことで、事業成功へのコミットメントや、最小リソース、期間でプロダクトを作るインセンティブが生まれます。

また、クライアントとしても、Prehypeの投資を受け入れることによりコストを下げ、多くのプロジェクトを並行して進められるメリットがあります。

バリデーション
100-dayインキュベーションでよい結果を得た事業案は、継続的にプロダクトのブラッシュアップ、組織構築を進めます。これ以降の期間や発生費用はプロジェクトによって異なりますが、新事業側で人材を採用することで、段階的にPrehypeの関与を下げていきます。

創出された事業

ここからはPrehypeのプログラムにより創出された事業を一部紹介します。

Newsmart (NewsCorpと共創)

Wall Street Journalなどのメディア記事を活用した言語学習プラットフォーム 企業研修会社や、語学学校にもサービス提供 ベータ版リリースから6ヶ月後十分なユーザー数とアクセスを集めたため、NewsCorpがサービスを買い取り、NewsCorpの新事業として運営されている

Betabox(モンデリーズと共創)

プロダクトサンプリングを効率化するサービス eコマース企業と協業し、ユーザーが購入した商品箱の中にサンプリング用の製品とキャンペーン情報を記載したチラシを入れる これにより、サンプル送付先ユーザーの精緻化や、高いエンゲージメントを実現する モンデリーズのブランドポートフォリオだけでは本事業を成立させるに十分ではないと判断され、ソーシャルメディア:VaynerMediaに売却された。売却益はモンデリーズとPrehypeで分配された

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事業ドメインは個別のクライアントに合わせて設定されるが、 クライアント人材の認識する業務、業界の課題を事業アイディア創出のきっかけにしているので比較的既存ドメインに近いといえます。

また、Prehypeネットワークの人材と、クライアント人材という限定的なメンバーでの共同開発であるため、比較的オープンな取り組みであると言えます。

まとめ

いかがでしたか、今回はスタートアップ創出サービス企業Prehypeを紹介しました。

Startup as a serviceとして、大企業人材も巻き込みながら事業を創出するPrehypeの取り組みは参考になるのではないでしょうか。

 

また、自社でも事業に投資することで、受託型の工数に基づくビジネスとは異なる立場を取っていることも特徴と言えます。

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