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イノベーション組織研究19:マイクロソフト The Garage

アイディアを形にするワールドワイドコミュニティ「The Garage」

今回は、マイクロソフトのイノベーション組織「The Garage」を紹介します。The Garageは、マイクロソフトの社員が熱意を持って取り組みたいアイディアを世間に察知されることなく検討するためのプロジェクトとして、2009年にスタートしました。その後、2014年にWebサイトを公開し、テスト中のサービスを一般ユーザーも体験できる仕組みになりました。

現在では、世界中のマイクロソフトグローバルディベロップメントセンターに設置されており、バンクーバー、シリコンバレー、ケンブリッジ、ヘルズリヤ(イスラエル)、ハイデラバード(インド)、北京に拠点を構えています。各ロケーションではワークショップが開催され、ウェアラブル、ドローン、AR/VRなどの領域で技術コミュニティが形成されています。

特徴として、技術系人材か否かにかかわらず、それぞれのスキル、経験、興味を生かし、新しいサービス/プロダクトを生み出すチャレンジができる点が挙げられます。マイクロソフトにハッキングカルチャーを持ち込んだ取組みとも言え、マイクロソフトを復活に導いたCEOサティア・ナデラ氏が重視する“Growth Mindset”とも整合している組織であると言えるでしょう。

プロダクト創出のプロセス

The Garageには、大きく2つのプログラム、ハッカソンとプロダクト開発があります。

ハッカソン

世界中のマイクロソフト社員が参加するイベントです。48時間のイベント中に参加社員同士でチームを組み、ビジネスアイデアを発想します。有望なアイディアは実現に向けてプロジェクト化されます。あらゆる職種の社員が参加可能で、最近のハッカソンでは45以上のロケーションで、23,000人以上の人が参加し、5,800以上のプロジェクトが生み出されました。

優勝したチームはシニアマネジメント層にプロジェクトをプレゼンテーションする機会を得ることが可能で、実行可能性、ビジネス戦略との整合、特許取得のポテンシャルなどの観点を評価され、基準を上回るアイディアには投資も行われます。結果として多くのチームがプロジェクトに取り組み続けています。

48時間という限られた時間では次世代の中核製品になるようなアイディアはなかなか出て来ませんが、既存プロダクトの顧客体験を改善するようなアイディアは多く生まれています。この取り組みの狙いは、新規事業の創出というより、イベントを通じて日常業務に活かせるようなインスピレーションを参加社員に獲得してもらうことといえるでしょう。

クロスファンクショナルチームによるプロダクト開発

The Garageではスモールチームを組成し、プロダクト開発を行うプログラムも提供されています。画像にみられるように、チームの人数は特に規定されていません。

各チームはThe Garageに所属するテクニカル、Go to Marketの専門家達からアドバイスを受けながら、課題仮説検証、プロダクトマーケットフィット検証のための実験を繰り返します。 また、通常の製品リリースよりも簡便なリリースプロセスを整備したり、Webサイトを通じたテストユーザー募集を行うことで、より早く顧客からフィードバックを得ることができる設計となっています。

創出されたプロダクト/サービス

The Garageからは数多くのサービス/プロダクトが創出されていますが、その一部を紹介します。

3D Models in Office

パワーポイント、エクセル、ワードファイルに3Dモデルを簡単に挿入し、回転、反転、ズームなどの操作ができる追加機能。 2016年のハッカソンをきっかけにプロジェクト化され、マイクロソフトオフィスの機能として導入された。

Eye Control for Windows 10

視線を使ってマウスやキーボード操作ができるWindows10の機能。アイトラッカーを活用することで、身体に不自由があるユーザーやALS患者でもコンピュータを操作することができる。2014年のハッカソンをきっかけにプロジェクト化され実現。

FindTime

企業間で簡単に日程調整ができるようになるOutlookのアドイン機能。 スケジュールが共有されていない企業間でも、アンケートを作成し手軽に日程を調整することが可能。

Microsoft Health Bot Service

AIを活用した医療機関向けチャットボット。 対話型で、診療プロトコルに基づいた症状確認、病状や医師に関する情報などを提供できる。2016年ハッカソンを通じてプロジェクト化。

イノベーション組織マッピング

The Garageは社員向けのプログラム提供を主としており、比較的クローズな取組みです。また、既存製品の機能追加や、Webサービス、アプリケーションを対象としており既存ドメインと近しいと言えます。ただし、プラットフォームに制約はなく、オフィス、Windows、Xbox、 WindowsPhoneなどのマイクロソフト製品はもちろん、Android、iOS、やブラウザ上で利用するWebサービスも対象となっています。

まとめ

いかがでしたか、今回はマイクロソフトのイノベーション組織「The Garage」を紹介しました。職種を問わず世界中の社員が参加できることで、非常に多くのプロジェクトを生み出しており、マイクロソフトにハッキングカルチャーを醸成している取組みだと言えます。

また、単なるイベントにとどまらずその後も継続的に開発に取り組むことで、結果として既存製品の価値向上や新規サービスの創出につながっている点は参考になるのではないでしょうか。

参考

The Garage

3D Models in Office

Eye Control for Windows 10

FindTime

Microsoft Health Bot Service

     
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