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イノベーション組織研究7:ジャガーランドローバー inMotion

ジャガー・ランドローバーのイノベーション組織「inMotion」

今回は高級自動車メーカーであるジャガー・ランドローバー(JLR)のイノベーション組織inMotionについて紹介します。 inMotionはモビリティ向けのアプリ、サービスを開発するための組織として、ロンドンで設立されました。JLR本体よりも速く事業創出するために、権限委譲された別エンティティとして存在しています。 自動車の場合、製品開発から上市まで数年単位の時間がかかり、製品ライフサイクルも長いですが、デジタルサービス領域で、そのスピード感では市場の流れについていけないという危機感に基づいて、立ち上げられたといえるでしょう。

inMotionは、外部スタートアップに投資をするための「inMotion Ventures」と内部で事業を創出するコーポレートスタートアップスタジオ*「Studio 107」に分かれています。 inMotion Venturesはモビリティ、トランスポーテーション、旅行業界のスタートアップを投資対象としており、既存事業にとらわれず人の移動全体を対象とする「イノベーションフロンティア」と定義されています。 一方、Studio 107は自動車メーカーとしての既存事業を拡張する「インダストリーフロンティア」と定義されています。

なお、Studio 107という名前はモータースポーツにおける107%ルール:トップのタイムから107%以内のタイムを出せないプレイヤーは脱落するというルールに由来しており、常に最善のアイディアを選び、高速に開発していくという意図が示されています。

*スタートアップスタジオについては「前回記事」を参照ください。

今回は、内部での事業創出に特化した「Studio 107」について紹介したいと思います。

Studio 107

Studio107のエグゼクティブディレクターはLars Klawitter氏が務めています。Klawitter氏は高級自動車業界のデジタル対応について20年以上の経験を持つ人物で、これまでにSAPにてBMW向けのプロジェクトマネジャー、ロールスロイスのITゼネラルマネージャーを務めてきました。また、エンジェル投資家としても活動しています。

Studio107内部には、データサイエンティスト、サービスデザイナー、エンジニア、ビジネスストラテジスト、ファイナンシャルサービス、UIUXデザイナーなど各領域の専門家が配置されており、アプリケーション、サービス開発に必要なリソースをスタジオ内で確保できる体制となっています。

Studio107事業創出プロセス

Studio107は、モビリティ向けのアプリ、サービス事業の創出に特化しており、ランドローバー本体の顧客や既存事業にプラスの影響を与える事業アイディアを創出します。 その後、デザインスプリントのアプローチを活用し、サービス内容を具体化、スタジオ内の多様な専門家を活用し、プロトタイプ開発を進めます。 この時、想定する顧客体験を実現できるよう、エンドユーザー視点では製品版に見えるプロトタイプを開発することを重要視しています。

一方、バックエンドは作り込まずに、人手で対応することで不要な開発工数や費用をかけずにユーザーニーズを検証します。

上記のプロセスにより8〜12週間程度という短い期間で複数のプロトタイプ開発を行い、最小のコストで事業化可能性を検証します。

創出された事業

Studio107で創出された事業として、近年注目度の高まっているサブスクリプションモデルを自動車業界に適用した「Carpe」が挙げられます。

Carpe

2018年6月にサービス提供開始。 月額制でジャガーランドローバーの新車を利用できるサービス。 利用料には車体、自動車税、保険、ロードサイドサービス、メンテナンス、タイヤ交換など、燃料費以外のすべての費用が含まれる。 走行距離に制限はなく、利用料は月額500ユーロ程度〜。

イノベーション組織マッピング

Studio107では開発に必要なリソースを社内に抱えておりクローズな組織といえます。inMotion Venturesでは外部スタートアップへの投資、連携を行っており、Studio107との役割分担がされているといえます。また、事業ドメインは既存事業の強化につながる領域を対象としており、シナジー創出を強く意識した組織であるといえます。

まとめ

いかがでしたか、今回はジャガーランドローバーのイノベーション組織inMotionを紹介しました。 前回のAXA同様、大企業主導のスタートアップスタジオという組織を用い、内部で新規事業を創出する仕組みは参考になるのではないでしょうか。 また、業界をディスラプトするようなアイディアにこだわるのではなく、既存事業とシナジーを生む領域に特化している点も特徴といえます。

     
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