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イノベーション組織研究13:Google Area120

「20%ルール」をアップデートする組織 Area120

今回は、Googleの社内新規事業創出組織である「Area120」について紹介します。

Googleには、業務時間の20%までは本来の担当業務ではない仕事に使うことができる制度「20%ルール」があり、過去にはこの制度からGmail, AdwordsなどのGoogleのコアになるサービスが生み出されました。しかし、最近では本来の業務が忙しく、20%ルールで自由なテーマに取り組む余裕がない社員が多いことが課題となっていました。

Area120はそのような課題を解決するために2016年に設立された組織で、現在サンフランシスコ、パロアルト、ニューヨークにオフィスを構えています。 社内からビジネスプランを募集し、有望なプランのビジネス化を支援する社内新規事業創出プログラムを運営しており、有望なアイディアを生みだしたチームは、数ヶ月間100%の業務時間をアイディアの実現に使えるようになります。

Googleといえば、既存領域にとらわれずムーンショットのアイディアを生み出すGoogleXや、外部スタートアップに投資するGVが有名で、社内向けの新規事業創造組織であるArea120はあまり知られていないのではないでしょうか。しかし、実はArea120にはこれまでに1,000以上のアイディアの応募があり、50以上のアイディアが採択されています。

オープンイノベーションが注目され、新規事業のシーズは外部調達する流れもありますが、Googleは社内からの事業、サービス創造も引き続き重要視していると言えます。また、このような社内新規事業プログラムには、起業家精神を持った社員をリテンションする目的もあるでしょう。

事業創出のプロセス

Google社員は数人でチームを組み、実現したいアイディアをArea120に応募することができます。 応募を受けたArea120は通過させるべきアイディアを審査します。この際、創業者のセルゲイ・ブリンが提唱する「Toothbrush-Test」と呼ばれる選考基準が取り入れられているようです。これは、「”あったらいいな”程度ではなく、歯ブラシのように日常的に必須になるサービス/プロダクト」であるという意味が込められています。

採択が決まると、起案チームにはアイディア実装に向けた資金援助と、社内外からメンバーを採用する権利が与えられます。またArea120の運営メンバーや、フェローとなる起業家、Google内の専門家からメンタリングを受けることも可能です。

検証段階で良い成果が出た場合は、追加で投資を受け、活動を継続することも可能です。また、仮に失敗しても、Google内で別の担当業務に異動する機会が与えられるため、リスクを減らしてアイディア実装にチャレンジできる仕組みになっています。

このような仕組みの中で、多くのアイディアが実装、テストされており、既に複数のサービスがローンチされています。

ちなみに、アーリーアクセスプログラムが公開されており、サイトから一般の方も検証段階のサービスをトライアルできるようです。

創出されたサービス

ここからはArea120で創出されたサービス/プロダクトを一部紹介します。

AdLingo

チャットボットをWeb広告に統合し、会話型の広告を作るサービス 多くのオンラインコミュニケーションが会話型になる流れの中で、マーケティングツール、広告も会話型にするという提案。ウェブ広告上にチャットボットを配置し、リアルタイムのコミュニケーションや購買、商談へつなげる

AdVR

VR向けの広告フォーマット・VR空間内でのビデオ広告フォーマットを提供。Unity向けのプラグインで、あらゆるVRプラットフォームに組み込める簡単なフォーマットを目指している。VRデベロッパー向けの招待制のAdVRのSDKへのアーリーアクセスプログラムを実施している

Glasshopper

クイズを通して、Javescriptを学べるスマートフォンアプリ。既にApple、Googleのストア上で公開されており、20,000以上のレビューを獲得。 短期的な収益貢献はないが、「より多くの人がコーディングを学ぶことで、Googleの製品をより多くの人が活用できるようになり、デジタルエコシステムを拡大する」という狙い。現時点では収益化よりも、ユーザーの拡大を目指している

Tailor

パーソナルスタイリストアプリ オンラインでパーソナルスタイリストからのフィードバックが得られたり、持っている服から新しい組み合わせを考えられるアプリ。

イノベーション組織マッピング

Area120では短期的な事業シナジーは求められていないため、すべてのアイディアが既存事業ドメインと近いわけではありませんが、Googleの既存の広告事業に近しい事業アイディアも多くみられます。 また、基本的には社員を中心としたチームで開発が進められるためクローズな取り組みと言えます。

まとめ

いかがでしたか、今回はGoogleの社内新規事業創出組織であるArea120について紹介しました。GoogleというとGVやGoogle Xを通じて外部からイノベーションの種を集める印象が強いですが、20%ルールに象徴されるように社内からの事業創出にも注力していることがわかります。

オープンイノベーションの重要性は認識した上で、社内に眠るアイディアの種を引き上げる活動も重要だといえるのではないでしょうか。

     
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