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イノベーション組織研究17:Amazon Lab126

Amazonのハードウェア研究開発組織「Lab126」

単年度の利益に固執せず、ひたすら顧客目線で巨大な投資を続けるAmazon。2017年度年間研究開発費は226億ドルに登り、世界の上場企業1,000社の研究開発費ランキングで2年連続トップとなりました。今回は、そんな無尽蔵とも言える研究開発費を持つAmazonのコンシューマー向けハードウェア研究開発組織「Lab126」について紹介します。

Lab126は、2004年に電子ブックリーダー「Kindle」を開発するために設立された組織です。ベゾス氏はLab126設立にあたり、「紙の本の業界関係者全員を失業させる」という過激なゴールを定めました。責任者は組織設立以来、パーム社の元副社長でハードウェアエンジニアリング出身のGregg Zehr氏が務めています。現在では、アメリカ内外に3,000人超の社員を抱え、自社のプラットフォームの裾野を広げるハードウェアデバイスを開発しています。

多産多死を前提としたハードウェア開発

ここからは、Lab126の特徴について深掘りしていきます。Lab126に関する公開情報は少なく、実態は謎に包まれています。その秘密主義ぶりは、ダミー会社を通して特許出願するなど随所に現れています。ですが、CEOであるベゾス氏が直接プロダクトマネージャーとなり、多産多死を前提として多くのハードウェア開発を行っている点が大きな特徴です。

個々に動く少数精鋭チーム

Lab126では、ベゾス氏によって制定されたルール”two pizza rule”に則ってチームが活動しています。そのルールは、「社内のすべてのチームは2枚のピザを食べるのにピッタリなサイズでなければいけない」というもので、全社的に5–8名でチームが構成されています。各チームが独自に意思決定権を持っており、煩雑な他部署との調整や複雑な事業計画の作成なしに製品ラインを追加することができるため、圧倒的な開発スピードを実現しています。

事業創出プロセス

過去のインタビューなどから製品アイデアは従業員全員から集められていることが伺えます。エンジニアが遊びで開発していた機能をベゾス氏が気に入り、プロダクトに実装されたケースもあるようです。またAmazonには、全社的な指針として「常に顧客を起点として行動する」ことがあります。そのため、以前はコンセプトストリーミングという一般人によるアイデア募集も実施していました。これはAmazon社外からアイデアを募集し、Lab126のリーダーシップチームがアイデアを厳選した後、上位3つのアイデアをGregg氏に提示するというものです。

これまでのプロジェクト事例

ここからはLab126によって開発された製品事例について紹介していきます。

Kindle

言わずと知れた電子ブックリーダー。Kindle誕生以前にはSONYのLibrieという電子ブックリーダーが存在しており、ベゾス氏がLibrieをAmazonのビジネスに対する脅威だと感じたことから、すぐに開発する意思決定をしたという背景がある。Lab126は、当初このKindleの開発のために立ち上げられた。

Fire Phone

Fire Phoneは、3D表示機能を搭載した高機能・高価格なスマートフォン。ハードウェア技術的な水準は高かったもののAmazonの販売戦略は後手に回り、失敗に終わった。

Fire Phoneの開発時に、ベゾス氏が3D表示機能に熱中し、「顧客がiPhoneではなくあえてAmazonフォンを買いたくなる独創性」を開発メンバーに強烈に求めた。Lab126のある幹部は、「ベゾス氏には、どうでもいい機能にはまりこんで、それで大騒ぎする傾向がある」とコメントしている。

Amazon Echo

人工知能Alexaを搭載したAIスピーカー。 Amazon Echoの開発は、拡張現実(AR)を扱った製品を開発する幻のプロジェクトCの派生で開始された。ベゾス氏は、スピーカーとショッピング体験を統合することを思い描き、当初は単純な機能を搭載する安価なAIスピーカーを予定していた。しかし音声認識技術や音声アシスト技術を保有する会社を買収し、開発を進めるうち、より処理能力を高めたほうがいいという判断がされ、現在のように複雑な処理がこなせる製品となった。

イノベーション組織マッピング

一部、アイディアを公募はしているものの、ハードウェア開発は社内で秘密裏に行われており、クローズな組織であると言えます。また、既存事業のエコシステム拡大を狙ったハードウェア開発を中心に進めており、既存ドメインと近しいと言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回はAmazonのハードウェア研究開発組織「Lab126」について紹介しました。多産多死を前提としてプロダクト開発をしているため、Fire Phoneのような失敗作が生まれることもありますが、kindleやAmazonEchoなどの成功を生み出しているLab126。ベゾス氏自らがプロダクトオーナーとなることで、迅速な意思決定と開発が進められ、結果としてAmazonのエコシステム拡大にも貢献していると言えます。

参考

Amazon Lab 126

     
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