アーキタイプの菅野です。遅ればせながら本ブログへの初エントリとなります。今後ともよろしくお願いいたします。

米国ラスベガスで開催中のCESでは「スマートTV」が注目を集めていますが、テレビをインタラクティブに楽しむ方法は、(1)TV本体のスクリーンをインタラクティブに活用していく方向と、(2)リビングにある他のデバイス(スマートフォン、タブレットやノートPC)のスクリーンを活用する方向(デュアルディスプレイ)に大別されます。

視聴者の目線からすると、スマートTVの普及はそれ単体で、オンデマンドな映像コンテンツの購買経験という点で革命を引き起こすことは間違いありません。しかしながら、新たなテレビの視聴体験の提供という点では、デュアルディスプレイを前提としたサービス設計が必要になってくるでしょう。

大きな壁となるのはUIです。テレビ番組を見ているのに肝心の画面が小さくなってデータ領域が表示されたり、情報が画面にオーバーレイされたりするのは、テレビ本来の視聴体験を大きく損なうことにつながるため、自ずと複数デバイスのディスプレイを役割分担させながら使うことが必要となってきます。

年明けから、放送事業者がデュアルディスプレイでソーシャルTVの可能性を模索しているベンチャー企業との資本提携のニュースが米国と英国から2つ届きました。

タイムワーナーがGetGlueに追加出資(2011年12月の$6Mのラウンドに続いて2012年1月の$12Mのランドへの追加出資を実行)
GetGlue prepares to take social TV mainstream with $12M in funding (SocialBeat)

BSkyBがソーシャルテレビ・サービスのZeeboxに出資
BSkyB buys stake in Zeebox start-up (FT.com)

なぜ今、こういった提携を行われるのか。放送事業者には本業とのシナジーへの期待、ベンチャー企業側にはユーザー数の拡大、両者に共通する背景にはソーシャルメディアの台頭があります。

放送事業者のインターネット事業の従来の収益モデルであった、見逃し番組のオンデマンド視聴やデジタルコンテンツ販売やEC事業との連携など「放送外収益」を狙うというものではなく、番組のリアルタイム視聴を促進し広告収益を維持拡大する本業へのシナジーを期待しての投資だと思われます。番組にチェックインしたり、番組に関するツィートを友人にシェアしたり、鍵を握るのはソーシャルとの連携を加速させるツールとしてのアプリです。資本提携をきっかけとして、番組を通じて投資先のアプリを普及させ、ソーシャルメディアを積極的に使っていくという戦略が見て取れます。

日本にもテレビとソーシャルの領域で、ベンチャー企業が手がける「tuneTV」や「コレミタ」などのアプリサービスがスタートしています。今後は、番組単位でのタイアップから始まり、将来的に資本提携に発展していくのかもしれません。この領域における放送事業者とベンチャー企業との関係は、放送事業者によるマイナーな資本参加による、相互に非独占的で緩やかな提携関係に落ち着いていくのではないかと推測します。

デュアルディスプレイをめぐる新しいテレビ放送の楽しみ方は、まだまだ多くの可能性が残されています。放送事業者側からの仕掛けとしてオープンなイノベーションを促進するような動き(例えば、番組表データのAPIを公開するなど)があれば、新しいアイディアを持つベンチャー企業の参入が容易になるでしょう。

放送と通信がマルチデバイスで連携するIPデータキャストが本格普及する近い将来に向けて、デュアルディスプレイを活用した放送コンテンツの原型が、さまざまな形で世に出て行くことによって、もっとテレビが楽しくなっていくことを期待しています。

蛇足ながら、ベンチャーと大企業のコラボレーションによる事業創造は当社のミッションの一つであり、メディアコンテンツ業界はもっとも得意とする領域でもあります。放送事業者の皆さん、オープン・イノベーション戦略への転換、ベンチャー企業との提携による事業開発にお悩みがございましたら、お気軽に当社へご相談くださいますよう。