先日Wantedlyの仲CEOによるサービスローンチのブログに「お世話になった書籍」があり、その中に「この若さでその本読んでたのか」的一冊を発見し、冗談抜きでかなり感激した為、急遽「アーキタイプで支援したくなるのは"こんな本を読んでる起業家だぜ"な10冊」というのをまとめてみました。

いずれも僕が学生時代から現在に至るまで、僕の構成要素として深く染みこんでいる名著です。アントレプレナーとして学んでいて欲しい要素で整理してます。


1:巨視的構想力:『夢の潮流』横井宏(講談社第一出版センター)
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いきなり絶版本で申し訳ありません。
90年代にWOWOWの裏帯域で放送していた衛星デジタル音楽放送セントギガの編成総論。横井氏は前職がこれまでのFM局のスタイルを一変させ大成功を収めたJ-WAVEの編成フォーマットを考案した後に、当時の行政からもう一つ!と請われてラジオのベンチャー企業とも言える同社に入社し、日本初の有料衛星デジタルラジオという未踏な領域に対して回答を出した企画書がそのまま読み物となってしまった希有な一冊。
太陽と月と海のリズムに合わせた編成フォーマットの「タイド・テーブル」を考案し、24時間ノンストップCM無しで世界中の海や山や森の自然音と開局から交代制でつとめるDJが選局する楽曲は、潮が満ちてくる時間帯にはアップテンポな曲を、潮が引いていく時間帯にはアンビエントな曲をかける事で地球と身体性をシンクロさせる、という僕の拙い言葉で書くと「?!」なコンセプトの文章は沢木耕太郎氏からのお勧めを経て書籍化したものです。地球規模で製品を考え、実現し世界中のラジオ関係者から激賞されたスゴイ大人が20世紀に日本にいた事は起業家の皆さんにとって勇気づけられる事になると思います。
この話はまた別途ブログ化したいと思いますが、世の中には古本屋か図書館くらいにしか流通していない同書、当社には数冊あるのでどうしても読みたい人は麻布十番までお越し下さい。オフィスでの閲覧ならOKかも。


2:発想方法のフレーム化:『アイデアの作り方』ジェームズ・W・ヤング(阪急コミュニケーションズ)

アイデアのつくり方

僕は新卒で広告代理店に入社したのですが、当時先輩に勧められた記憶がある一冊です。著者のジェームズ・ヤングは広告業界の立場から新しいアイデアを作る手法をまとめてます。曰く「新しいアイデアは既存のアイデアの組合せ以外のなにものでもなく、物事の関連性を見つける事がアイデア発想のカギ」であると提示しています。簡単な事のようですが、全くその通り。新しいビジネスアイデアを考える際にも既存のサービスの組合せ、しかも全く思いもつかない組合せで構成されるとグッとくるものです。投資をする立場としても既に成功していると理解できる事象をベースに、起業家がもってきたビジネスアイデアを評価します。30分位で読める本なので是非一読をお勧めします。
大事な事は、根を詰めて考えた後には一度全く忘れるというプロセスが大事というのも僕的にはグッときます。ベンチャー企業経営者こそ、夜飲みにいったり週末のスポーツや旅行をすべきと常々言っている理由もここにあったりします。Salesforce.comのマーク・ベニオフ(当時Oracle勤務)がハワイの海で泳ぎながら、Amazon.comとOracleの事を同時に考えながら、ネット上で業務ソフトを提供するアイデアに至る、なんて話ですよ。


3:技術イノベーションの構造化:『テクノジーとイノベーション』W・ブライアン・アーサー(みすず書房)

テクノロジーとイノベーション―― 進化/生成の理論

アイデアと同様にテクノロジーも既存のテクノロジーの組合せから生み出され、構成要素そのものもテクノロジーであるという事を解明している名著。開発指向の起業家の人は自分が何を生み出したいのかを整理する時に役立つフレームワークであるのは必至です。書籍の帯にGoogleのエリック・シュミットが「われわれはアーサーの理論に基づきJava開発を始めた」なんて書いてあるだけでワクワクします。


4:アフォーダンス:『誰のためのデザイン?』ドナルド・A・ノーマン(新曜社)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

今やウェブ開発者の誰もが「ユーザビリティ」を口にしますが、そもそも一番最初に概念として明確にしたのがこの本。90年代後半ウェブサイト制作がビジネスになり始めた頃、世界中が全く無手勝流なサイトデザインを構築していた時に、この本の存在は大きかったです。ドン・ノーマンは認知科学者でありながら一時期、AppleのフェローとしてMacintoshやOSのUIなどへもの申す立場のあとに、UI/UXのコンサルタントとして世界中のトップ企業のユーザビリティのguruとして活躍しています。当時AppleからPDAのNewtonが出たにも関わらず"人にとって可読性が高くモビリティ・共有性があってコンパクトで安価なのはA4の紙だ"なんて暴言をはいてしまうヒューマン・インターフェースの巨人は「モノに備わった、ヒトが知覚できる行為の可能性」としての「アフォーダンス」という概念を再三同書で取り上げます。やや難解な事もあるのですが、そもそもユーザビリティを構成する最も重要な発想であり、何故このデザインがユーザ体験を優れたモノとするのか?と言うことをしっかりと経営者が把握しているかどうかは、サービス開発にとって最重要な要素ですね。


5:資金調達メソッド:『起業のファイナンス』磯崎哲也(日本実業出版社)

起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと

起業の為の参考書は色々ありますが、今読むならこれにトドメを指します。isologueで有名な磯崎氏はCFOとしての立場や公認会計士、監査役といった現場感満載のお立場から渾身の一冊をお書きになられたなという感じです。当社に訪れるスタートアップの中には今でも資本政策をあまり理解していないが為に、設立時の株主や比率などで「うーん、これは...」とうならざるを得ない方もまだまだ多いのが現状です。もうなんとも手助け不能です...。折角、新しい海に飛び出すのですから少なくとも最低限の泳ぎ方や船の動かし方や海図の読み方くらいは学ばないといけないですよね。ただ泳ぐのが好きなら自分一人で泳いで溺れたりすればいいのです。
日本のベンチャーキャピタル事情をベースにした投資契約や投資家との交渉、更には種類株式についても章をさいている所もとても活用しがいのある、現代の創業者にとって手放せない書籍ですよ。


6:ベンチャーキャピタリストを顧客として捉える:『起業GAME』ジェフリー・バスギャッグ(道出版)

起業GAME

ベンチャーキャピタル続きですが、VCについて語ってる書籍もドットコムバブル以降沢山出てますが、最近ではこれはお気に入りの一冊です。Twitterのジャック・ドーシーやZyngaのマーク・ピンカスといった今をときめく起業家がどうやってVCと向かい合って資金調達をしてきたかのストーリーが生々しいのもいいのですが、著者自身が起業家からベンチャーキャピタリストに転身し、VCがどういうメンタリティやフレームワークで投資を決めるかといった事が延々と書かれているのがとても貴重です。投資家を顧客として見たときに、どうやったら口説けるか?という事を念頭においてピッチをするアントレプレナーが日本にはまだまだ少ない気がします。顧客を知らねばモノは売れぬ、ですね。


7:最新マーケティング論ではユーザとは呼ばない:『新しいPRの教科書』ブライアン・ソリス&ディアドレ・ブレーケンリッジ(海と月社)

新しいPRの教科書

これも比較的最近の書籍ですが、ビジネス環境がソーシャル化した時代におけるPRやマーケティングはこう変わらなければならない的なアプローチはとてもすっきりと入ってきます。最近ではリーンスタートアップな手法で見込み顧客を開拓しながらサービスを作り上げるというのアプローチが大事だという論調になっているスタートアップ業界ですが見込み顧客にアプローチするにも自社のプレゼンスの有無がカギとなるのは当然ですし、特にB2Cの場合はどれだけ多くの見込み顧客にリーチできる存在であるかが生死の分かれ目となります。
サービスが出来てからPRの重要性を初めて意識するのではなく、起業当初から開発プロセスやサービスリリースに至るまで、または色々なイベント参加やブログを書く事も含めてどれだけ情報発信をしていけるかを企業文化やタスクとして埋め込めるかを考えるべきです。その点、本書は最高のマニュアルになってると思います。
もう自分たちの利用者の事を不特定多数な「ユーザ」とは言ってはいけないのです。


8:スモールチームマネジメント:『グアルディオラのサッカー哲学』ファン・カルロス・クベイロ&レオノール・ガジャルド(実業乃日本社)

グアルディオラのサッカー哲学

おい、サッカーか、と言わずに読んで下さいw。小職のサッカー、特にFCバルセロナへの情熱はハイテクベンチャーへのそれと同等な程、熱狂的なのものでして。当然クラブワールドカップ、社員と一緒に前から数列目でガン見してきました。
で、その世界最強のバルサを率いている世界最高の監督と言われているペップ・グアルディオラの分析本。彼が監督就任してから突然世界最強で有り続ける同チームの秘密は、最高峰の選手達の存在もあるのですが、ペップの信念はコーチング手法にとどまらず、選手管理術や選手の食事や練習スケジュールなど過去のしがらみを一気に覆すある意味マキャベリズム的な手法で一気にチェンジマネジメントに成功している所です。
かねがねドラッカーなどのマネジメント本がスタートアップサイズの企業にはしっくりこないなーと思っていたので、スポーツチームの監督術でも読んでみるかと思ったら、ドハマリしました。当社は支援先の条件としてまずは(バンドっぽい)チームであることをかねがね主張してますが、もう少し大きくなるとサッカーサイズになる訳で、その場合のチームマネジメントは必ずしも教科書通りではなく、こうした他の領域のベストプラクティスを取り込んでいくというのもアリだと思います。
ちなみに何故かベンチャーキャピタルやシードアクセラレータの方々にはバルサファンの人が少なからずいらっしゃいます。(K・M氏とかS・T氏とかW・K氏とか)きっとレギュラーメンバー11人のうちカンテラ(2軍以下のチーム)育ちが9人もいる素晴らしいチーム編成に、理想のスタートアップ企業像を重ねているのかも知れませんね。


9:発見学:『いかにして問題をとくか』G・ボリア(丸善出版)

いかにして問題をとくか

数学の本なのですが、ビジネスの世界でも十分使えるフレームをもった名作です。大学生の時はまだ数学の知識があったので数式満載の同書もふむふむ読めたのですが久々に読んでみると全く歯が立たず(´・ω・`)。エンジニア系起業家には特に読んで貰いたいですね。若いうちに。
問題を解くためには問題理解→問題解決計画→計画実行→結果検討、と当たり前といっては当たり前のプロセスについての事が記述されているのですが、この当たり前の事ができないがために問題の本質すら発見できない局面が起業すると必ず出てきます。その時にどうやって課題解決をしてくかのフレームワークとして捉えれば、文系の人にも十分応用可能な古典です。数式が分かるウチに読むことをお勧めします。


10:失敗学:『社長失格』板倉雄一郎(日経BP出版)

社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由

インターネットビジネス勃興期における象徴的な企業ハイパーネットの存在は意外と最近の若い起業家の方々にも知らない人が増えてきました。時代は変わるな。板倉氏率いるハイパーネットは一時期はマイクロソフトがバリバリの時期にビルゲイツから買収を持ちかけられるも、バリュエーションが思ったより高かった為、まだ成長できるなと判断した直後にキャッシュフローの悪化〜金融機関支援なし、の結末で倒産してしまった一連のストーリーが読めるスリリングなノンフィクションです。創業者がどのタイミングでエグジットすべきか。常に悩ましい問題ではありますが、ケースとしての失敗をキッチリ覚えておく事で腹の括り方が変わるはずです。当時に比べて現在は資本政策の環境が大幅に変わっているので全く同じ文脈にはならないと思いますが、成功事例ばかりでなく失敗事例も是非。僕の友人(@yanabo)が編集者というのもまた良しです。


11:スピード、スピード、スピード:『路上』ジャック・ケルアック(河出書房新社)

路上 (河出文庫 505A)

これはもうあまり理由ないんです。
単に僕が繰り返し読んだ一冊なだけで。高校生や大学生の人に読んで欲しいです。ストーリーは1950年代のビートジェネレーションやヒッピーと言われた世代のカリスマとその友人のCoast to Coastなロードムービーの様な小説です。著者ジャック・ケルアックのマシンガンの様な文体と主人公サル・パラダイス(ケルアック自身がモデル)の破天荒に何かを求め続け旅を続けるスタイルは、その後に勃興するシリコンバレーの若者達が寝ずに開発したりビジネスをとことん考えるスピリッツに通ずるものがあるのではないかと考え、今でもたまに手に取る永遠の青春本です。これを10代の時に読んでる起業家候補がいたらそれだけでググッときます。


とりあえずここまで。本当はまだまだ取り上げたい本があるのですがまたいずれ。

で、

・1冊も読んだ事ない方:えーと、人生色々ですので頑張って下さい。
・1〜3冊読破の方:なかなか筋ヨサゲです。起業にはアイデアと着眼点がまずは大事なことをいつも意識して下さい
・4〜6冊読破の方:かなり起業家としての修行を積んできてるとお見受けします。色々なイベント参加して起業マインドを高めてみては?
・7〜10冊読破の方:IT領域でビジネスを検討しているのであれば、一度面談しますのでinfo@archetype.co.jpまで御連絡を。
・11冊読破の珍しい方:10〜20代でしたら当社社員として採用を検討しますので希望の方は履歴書をお送り下さい。
 30代以上の方はきっと素晴らしい日々を謳歌していらっしゃる事と存じ上げます。お互い人生楽しみましょう。


では。